というわけで、すみません。昨日の続きです。
文中、変なパズルが出てきますが、笑わないでください。そして、熟語を使いこなせていない文体はどうか我慢してください。自分の語彙のなさに落ち込んでいる最中なんです…。他人の文体を真似るって、ホント難しいです。
仙蔵にも困ったものだよ。
ぼくから言わせれば変態パズラーだね。ぼくはパズル解きなんて不毛な時間は、もっと別のことに費やしたいものだね。たとえば、これからの人生についての壮大なる計画について熟慮するとか。友人の文次郎などは、自分のことを棚に上げて、
「模試の成績が悪かったがための迂遠かつ冗漫な言い訳だ」
と、決めつけるんだな。これが。
あ、そうそう。
紹介しておかなきゃね、一応。
潮江文次郎。ぼくの高校時代の同級生なんだ。
こいつがね、たいそう変わった奴でね。髪を切りに行くのが面倒臭いのか、長髪っていうほどではないけれど、後ろでひとつに結べる位の髪の長さなんだよね。
それを言うのなら、仙蔵だって自慢の黒髪をセミロングに伸ばして文次郎みたいに後ろでひとつに結わえているんだ。文次郎は、正直言って文字どおり境遇どおり「素浪人!」って感じなのだけど、仙蔵はどういうわけだか、むしろ格好良く見えてしまうんだな。ホントに、創造主をPL法で訴えたくなるよ。福沢諭吉なんか見ると腹が立ってしょうがないんだ。よくもまあ、あんなことを言うよね。あ、でも、万札を破り捨てるなんて貧乏浪人には出来ない芸当なんだよ。それは頭に入れておいて欲しいな。
とにかく、ぼくと文次郎は大学受験に失敗して、浪人稼業を余儀なくされているってわけだ。
「おい、八丁堀」
「何だよ、文次郎。これはパロディなんだから、原作どおりに呼ばないでくれよ」
「じゃあ、は…」
ぼくは慌てて文次郎の口を塞いだ。こんなときに本名を呼ぼうとはどうしたわけだろうね。
「…今は、お前は文次郎だ。饗庭慎之介じゃないんだ。そしてぼくは伊作。お○○○おじゃないぞ。ぴいくんでもぴーすけでもない」
「…ややこしい奴だな」
…よく言うよ。
そう言いながら、予備校の学食ではなくて、「阿羅漢」のランチメニューに詳しいのはどういうわけだろうね。
「待たせたな」
…ほんっとうに、こいつは原作どおりなら、どんなに才があっても、どんなにルックスがよくても、なんか納得してしまうのだがなあ。
おあいにくさま、とんでもない。仙蔵は原作とはほど遠いんだな、これが。特に中身が。
とにもかくにも、可愛くないんだ。
ぼくが、退屈していると、素振りにも口端にも上せようものなら、早速のパズル攻撃だ。
しかし、文次郎も変態パズラーへの道に片足を根元までうめているみたいなんだけどね。仙蔵の出すパズルにことごとく玉砕しながらも、めげない精神にはただただ、脱帽するよ。
論理学的にはある命題が正しい場合、その対偶も正しいとなっているんだ。
つまり、
「英雄、色を好む」
ってのが
「色を好まない者は、英雄ではない」
なんてことになるよ。…とんでもない話だけどね。
かといって、
「色を好むなら英雄である」
ってのは無しだよ。これは『逆は必ずしも真ではない』だからね。
…なんてことをぐたぐた言っていたら、仙蔵に
「そんなことを言っているヒマがあるのなら、参考書やらと机でデートしてはどうだろう」
なんて言われた。ぼくは、いつもの皮肉だとスルーしたけれど、文次郎は違ったんだ。つくづく学習能力がないね。
「よし、青年、俺は今脳が退屈している状態だ。青年のパズルは時間つぶしにもってこい、だ。さあ、遠慮無しに 出題しろ」
…解けたことが殆どないクセに。
ぼくはこっそりため息をつくよ。しかし、仙蔵は容赦なく文次郎にパズルを吹っかけている。
『同じ大きさのマッチ棒が6本あります。二等辺三角形を3個作ってください』
(…すみません、私がぱっと思い付いた問題です。簡単過ぎて申し訳ありません)
「…正三角形は二等辺三角形か?」
早速、文次郎が聞いた。ぼくも同じコトを聞こうと思ったので、手間が省けたよ。
「ああ、説明不足ですまん。三角形の二辺が同じ長さで他の一辺は違う長さだと思ってくれ」