管理人の日常です。
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2021/05/03 ---- メモ書きを見つけたので整理がてら。
2020/12/08 ---- 旦那が三回目の長期病休明け
2020/11/27 ---- 週三でジムに行くと
2020/11/09 ---- 旦那が三回目の長期病休
大どんでん返しがあって、まだまだ仕事のケリがつかない…
課のみなさんに手伝ってもらったあげく、私は使ったことすらない機械を動かすハメに…。
何か不測の事態が起こっても他人に縋らなきゃいけないなんて、すごく面倒臭い。
しかも、うちの課で使っていたミクロ天びんがぶっ壊れてわざわざ他の課のを借りなきゃならないなんて…。試薬抱えて流浪の民だわ…
しかも、雪が降っているし…職場に無事にたどりつけるのかしら。
バレンタイン小説の続きです。よろしければどうぞ。
St. Valentine's Day ('09) 3
扉が密やかに閉められたことも、女の子が喜びを顔一杯に表していたことも、文次郎は解らなかった。今や、彼の心から何かが吹っ飛んでしまった。そう、それまで大部分を占めていた『警戒心』である。
文次郎はウキウキして包装を拡げた。カードが添えられていて、文次郎はざっと目を通したが、意味を断片的にしか捉えられなかった。『好きです』とか『会ってください』とか、その他いろいろとありがちな文句やら。文次郎の目は、彼女の名前すらすっ飛ばした。それくらい嬉しかったのだ。
だからといって、人間が本能的に備えているほんの少しの警戒心まで無くしてはいけない。
文次郎は今や幸福の絶頂にあった。級友の聞き慣れた声が耳を貫くまでは。
「上機嫌だな。女に手作りチョコをもらったくらいで鼻の下伸ばすなど見ていらんわ」
仙蔵の声は文次郎の心臓を直撃した。藤枝梅○みたいなヤワなものじゃなくて、大動物用注射針レベルのぶっとい奴がぐっさりと突き刺さったみたいだ。カッと目を見開いて戸口を見れば、いつの間に開けられたのか、開けっ放しのドアににっくき宿敵(時期限定)が寄りかかってニヤニヤと笑みをたたえながら余裕たっぷりにこちらを眺めているではないか。
文次郎は世界が崩壊する音を聞いていた。ベルリンの壁が崩壊したらしい。
「鼻の下など伸ばしてないぞ!」
自分でもベタなセリフだと思う。仙蔵もそう思ったらしくて、ため息をつきながら首を振っている。
「いいや、あのデレデレした顔を盗み撮りして学内データベース経由でばらまこうと思ったくらい私は呆気にとられていたよ。鼻の下は安藤先生の比じゃないな」
呆気にとられてよくもそこまで頭が回るぜ。文次郎はそれこそ呆気にとられたが、脂ぎった中年オヤジと比較されてさすがに頭に来た。
「どうしてあのおっさんと比べられなきゃならんのだ?!」
「おおそうか、ネット上にばらまいてもいいのか」
「お前人の話を聞かないって言われたこと無いか?」
「私のチョコは当然受け取ってもらえるだろうな」
ほら来た。ようやく本題に入ったぜ。文次郎は鼻で笑った。
「毎年毎年ひとつもチョコがもらえない俺をあわれんでくれてありがとう。だけどな、今年はちゃんと女子から手作りチョコをもらったからお前のはいらない」
仙蔵が残念そうに文次郎を見る。
「私のチョコはそんじゃそこらの奴はもらえないんだぞ?女子などは喉から手が出るほど欲しがっているというのに、全くお前と来たら…」
文次郎は全身の毛を逆立てた。
「勘違いするな、気色悪い!俺はもともとそういう趣味はないっ!」
「私もそういう趣味はない。あったとしても、お前のようにむさくて暑苦しい奴は絶対に相手にしたくない」
「俺も、お前みたいな過激な奴は願い下げだ。簡単にパイナップルの安全ピンを抜くイカれた野郎はごめんこうむる」
「…文次郎」
「何だ」
「不毛な口論は止めにしないか。エネルギーのムダだ」
「だったら最初から諦めればいいんだ」
(続く)
扉が密やかに閉められたことも、女の子が喜びを顔一杯に表していたことも、文次郎は解らなかった。今や、彼の心から何かが吹っ飛んでしまった。そう、それまで大部分を占めていた『警戒心』である。
文次郎はウキウキして包装を拡げた。カードが添えられていて、文次郎はざっと目を通したが、意味を断片的にしか捉えられなかった。『好きです』とか『会ってください』とか、その他いろいろとありがちな文句やら。文次郎の目は、彼女の名前すらすっ飛ばした。それくらい嬉しかったのだ。
だからといって、人間が本能的に備えているほんの少しの警戒心まで無くしてはいけない。
文次郎は今や幸福の絶頂にあった。級友の聞き慣れた声が耳を貫くまでは。
「上機嫌だな。女に手作りチョコをもらったくらいで鼻の下伸ばすなど見ていらんわ」
仙蔵の声は文次郎の心臓を直撃した。藤枝梅○みたいなヤワなものじゃなくて、大動物用注射針レベルのぶっとい奴がぐっさりと突き刺さったみたいだ。カッと目を見開いて戸口を見れば、いつの間に開けられたのか、開けっ放しのドアににっくき宿敵(時期限定)が寄りかかってニヤニヤと笑みをたたえながら余裕たっぷりにこちらを眺めているではないか。
文次郎は世界が崩壊する音を聞いていた。ベルリンの壁が崩壊したらしい。
「鼻の下など伸ばしてないぞ!」
自分でもベタなセリフだと思う。仙蔵もそう思ったらしくて、ため息をつきながら首を振っている。
「いいや、あのデレデレした顔を盗み撮りして学内データベース経由でばらまこうと思ったくらい私は呆気にとられていたよ。鼻の下は安藤先生の比じゃないな」
呆気にとられてよくもそこまで頭が回るぜ。文次郎はそれこそ呆気にとられたが、脂ぎった中年オヤジと比較されてさすがに頭に来た。
「どうしてあのおっさんと比べられなきゃならんのだ?!」
「おおそうか、ネット上にばらまいてもいいのか」
「お前人の話を聞かないって言われたこと無いか?」
「私のチョコは当然受け取ってもらえるだろうな」
ほら来た。ようやく本題に入ったぜ。文次郎は鼻で笑った。
「毎年毎年ひとつもチョコがもらえない俺をあわれんでくれてありがとう。だけどな、今年はちゃんと女子から手作りチョコをもらったからお前のはいらない」
仙蔵が残念そうに文次郎を見る。
「私のチョコはそんじゃそこらの奴はもらえないんだぞ?女子などは喉から手が出るほど欲しがっているというのに、全くお前と来たら…」
文次郎は全身の毛を逆立てた。
「勘違いするな、気色悪い!俺はもともとそういう趣味はないっ!」
「私もそういう趣味はない。あったとしても、お前のようにむさくて暑苦しい奴は絶対に相手にしたくない」
「俺も、お前みたいな過激な奴は願い下げだ。簡単にパイナップルの安全ピンを抜くイカれた野郎はごめんこうむる」
「…文次郎」
「何だ」
「不毛な口論は止めにしないか。エネルギーのムダだ」
「だったら最初から諦めればいいんだ」
(続く)
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