修理に出していた車が戻ってきました。一週間以上乗っていたATからMTへ。始めは怖かったけど、すぐにもとのカンを取り戻しました。しかし、トヨタのディーラーが言うことには、マニュアル車は採算が取れず、ファミリーカーでは一種類こっきりしか扱っていないそうです。トヨタではスポーツカーから手を引いている真っ最中で、将来的にはマニュアル車の展望は絶望的とか。以前は、マニュアル車の方が安かったのに。MTに拘っている人はごく少数居るらしいですが…採算が取れるほどはいないみたいですね。運転するのすら職人的技術がいらないのか。
話は大きく飛びますが、このことは技術屋の二極分化を示唆していると思います。
今までは、エリート(機器の技術開発)・中間層(実際に機器を制御する)・素人(知識はないけど中間層に教育されてどうにかこうにかなっている)でまかなわれていた技術屋は、エリートと素人で十分に成りつつあります。機器がブラックボックス化して、ド素人でも扱えるようになった分、中間層がいらなくなったのです。ほんの十年ほど前まで、機器はPCに完全支配はされていませんでした。複雑な機器を動かすには、中間層技術屋の本領発揮たる職人的技術が必須だったのです。それが、中間層の存在意義でした。
しかし、今ではPCで大抵の機器が制御できるようになり、仕組みを知らない人までもが、職人的技術なしで機器を制御できるようになってしまいました。
エリートは、ブラックボックスのよりよい開発に勤しみ、ド素人でも現場で知識無しに仕事が出来る。
中間層に属する私は穏やかならぬ話です。
以前に、マイクロマニピュレーター(ミクロン単位で物を動かせる。顕微鏡下で用いる)の宣伝を見ました。
それまでは、ゲーム機のコントローラーににあるようなスティックで操作していましたが、新製品はPC上で画面を見ながらマウスで操作出来るようになったのです。
スティック操作の時には、相当なベテランでも10ミクロン単位でしか再現性がありませんでした。
しかし、新製品は、未経験者が1時間操作に慣れるだけで数ミクロン単位の再現性を実現してしまったのです。
本当に複雑な思いになりました。自分の将来展望ががらがらと崩れていく感じでした。
して、大抵の会社は人件費を削ろうとしています。
人件費を削るとなれば、手っ取り早い雇用は非正規職員。
今までは、専門職となると、ある程度高給を約束しなければいけませんでした。
しかし、いまや知識がない人でも表面上は専門的な仕事が出来るようになってしまいました。
人材育成にわざわざ金を掛ける必要もなくなったわけで。
中途半端な経歴を持った人間は太刀打ちできません。
技術屋といえども油断が成らなくなった世の中です。
…本当は、生薬の話をしようと思っていたのに、話が妙な方向に飛んでしまいました。