「ママー」
帰宅してから懸命に家事に勤しむわたくしに、娘が声を掛けてくる。
「宿題で、アンケートしなきゃならないんだけど」
ん?と娘が持っている冊子を見てみると、
「普段からあなたのことを気にかけている家族にインタビュー!」
とか何とかいうもので、
『あなたが生まれたとき、どんなことを思ったか』
『あなたを叱るとき、どんなことを考えているか』
等を子供が家族から聞いて答えを書かなければならない。それにしても、考えようによっては難しい問いだ。
「ママは、○○が(娘のこと)生まれたとき、何て思いましたか?」
娘が期待に目を輝かして尋ねてくる。
私は真っ正直に答えすぎたらしい。
「おわった…」
娘は予想外の答えにきょとん。
「どーしてよ、もっと長い答えで!」
「いや、だから、『終わった…』。この一言に尽きる!」
「何が終わったなの!」
「お産が終わった。お前も子供産めばわかるって」
業を煮やした娘は例文を見せてくれました。
『生まれてきてくれてありがとう』等、歯の浮くような文言がずらずら。
ごめんよ、私はそんな例文的なことを考えたことがない。だが、例文の中に、合致しそうな文例を見いだしました。だから、娘がそこそこ満足しそうなことを言うことが出来たはずなのですが…(-_-;)
「早く顔が見たいな。って思ったよ」
「どうして?」
瞳を輝かせている娘。だけど、母は歯の浮くようなセリフを言うつもりはさらさらないよ。
「…ずっと一緒にいるのに、顔を見たことがないんだもの。見たいと思うよ。ママのお腹をぐりぐりやったり、蹴飛ばしたり、好き放題に暴れてくれた赤ちゃん、見てみたいでしょ?あんただって、母親になれば絶対に同じコト思うよ」
娘はちょっときょとんとしてましたが、にやり、と笑いました。
「そーだね。ママは知りたがり屋さんだから」